キャンバス

絵画がある。

上下を真っ二つに割るように、半分は黒ずんで、半分は真っ白でなにもない。
黒ずんだ方に目をやると、飛び散った絵の具が、画用紙を汚していた。
俺はそれがとても嫌いだった。

まとまり無く、だらしなく、卑怯で、臆病。
すっかり水分が無くなって固まった絵の具が、過ぎ去った時間の長さを感じさせた。

俺なんの為に生きているのだろう。
人は何のために生まれてくるんだろう。
人間はずっとそんな事を考えいて、でも、それに答えを出せる人はいない。
恐らく、意味なんて無いんだ。
自分達が存在しているのは、ただ、存在しているという事実があるだけなんだ。
意味は、人間がつけたものでしかない。

俺は偉そうに生きてきた。
まるで自分だけで生きてきたような顔して、たくさんの人に支えられてきた事を忘れていた。

なのに、世の中を斜めから見て、素直になれなかった。
不満だけ募らせて、やるべき事から逃れた。

俺は一人でいたいのに、ずっと寂しかった。
誰かに見ていて欲しかった。
けれど、自由になりたかった。
手に入れるべき自由は、最初から既に用意されていた。
ずっとずっと、昔から。

自分が嫌いだった。
コンプレックスの塊だった。
それは今もまだ、ある。
だんだんと減ってきている。
一つ一つ、嫌いな自分を潰していく。
逃げないようにと決めて、少しづつでも進んでいく。

黒で塗りつぶしたいような自分を、高台から見下ろしてみた。
俺が生きてきた道が、後ろにずっと続いている。

たくさんの色を絵筆につけて、跡を残してきたんだ。
散々迷ってきたきたし、間違いばっかり。
なんども行ったり来たり。
山道から下り坂。
スマートで美しくなんてないから、かつて白かった画用紙が、雑多な彩りで埋め尽くされているんだ。

汚らしくて厭らしいと思っていたその地図が、今は愛しく思える。
それは、その色の一つ一つが自分であり、関わりあった人々だったから。
色が重なったその先に、新しい色が生まれた。

固まった絵の具に触れて、3・2・1で、振り返る。
大きな画用紙。
何も描かれていない、真っ白な半分。
それは筆をつけるのも躊躇われるほど、輝いている。
けれど俺は、今日も汚し続ける。

完成図は、誰も知らない。
だけど、思い描く事は出来る。
ただそれに沿うように、筆を走らせる事にした。

間違ってもいいし、迷ってもいい。
どこか抜けていても、大丈夫。

自分の思うがままに、描くんだ。

Chaos boy

テーマは「脱・思考停止」。
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【 二十五ノ夜 】
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